3/11 サレルノからピエンツァへ 快適一等席の旅

カンパーニア州の一週間の滞在が終わり、今日は、中部イタリア・トスカーナの、ピエンツァという町に向けて出発する。

特急電車のICでサレルノからキウージと言う町へ4時間半かけて行き、キウージからはタクシーでピエンツァに向かうという、なかなかハードな旅である。だが、昨年の、マテーラからフィレンツェへの10時間かけての移動に比べると、常識的な移動である。そもそもがピエンツァは交通の便が悪い場所にあり、どこから行っても、それなりの時間がかかるのだ。

ホテルからサレルノ駅までは歩ける距離なのだが、スーツケースがあるため、タクシーを呼んでもらった。近くでごめんなさいという感じだったが、さらに運転手さんは0.9ユーロまけてくれた。

カンパーニア州での一週間は、あまり天気に恵まれなかったが、この日はカラッと晴れていた。こんなお天気の日にアマルフィ海岸を歩きたかったなあ。

だが、カンパーニア州に、あまり未練はなかった。カンパーニア州があまり気に入らなかったという意味ではない。今から向かうトスカーナ地方が、今までのところ、私の中でイタリアで好きな場所ランキング1位であるため、「これからトスカーナっ♪」と、私が浮かれているのである。

タクシーはあっという間に駅についてしまったため、電車の時間まであと30分もある。電車の中でお昼ご飯を食べる予定なので、何かパニーノでも買ってくることにした。経験上、駅近くのお店で売っている食べ物は、美味しくないことが多い。姉は、「美味しくないパニーノは絶対に食べたくない」と言い放った。姉ほど強い気持ちではないが、その意見には同意である。

そこで、英語があまり通じないサレルノなので、イタリア語が少ししゃべれる私が、駅からちょっと離れた所にバールを探しに行って、パニーノを買って来ようという案が出たのだが、ひとつ懸念があった。私は結構レヴェルの高い方向音痴なのである。果たして、電車の出発までに、道に迷わずに帰ってこれるだろうか!?

で、姉も一緒について行くという案が出たのだが、あまり治安は悪くないとはいえ、サレルノ駅にひとり母を残していくのもちょっと心配だった。そんなこんなで、結局、姉が買いに行くことにした。姉は英語しかしゃべれないが(しかもカナリあやしい英語)、なぜだか他人との意思疎通はできてしまう人なので、まあ大丈夫だろう。

かくして、姉はパニーノを探す旅に出たのだが、十数分後、ビニール袋を下げて帰ってきた。なんだか浮かない顔をしている。姉「どこの店も甘いパンしか置いてなくてさー。パニーノ探すのにめちゃくちゃ苦労したよ。やっとパニーノを売っている店を見つけてさー、あんまり美味しくなさそうだし、売り場のおばちゃんが興奮してなんだかんだイタリア語で言っててよくわからなかったんだけど、もうそこしかパニーノは無さそうだったから買ってきたよ」。

そっかー。まだ9時で朝ご飯の時間だから、朝ご飯には甘いパンを食べるのがイタリア人の習慣なので、パニーノ類は売っていないのだなー。ローマやフィレンツェでは朝でもパニーノを売っているお店を探すのに苦労しないのだが、観光都市でないサレルノでは、お店はイタリア人の習慣にしか合わせていないのだろう。

まあともあれ、無事にICに乗り込んだ。4時間半の長旅なので、1等車を予約してある。というかFS(イタリア国鉄)の公式サイトでネット早割を使って予約すれば、一等車も、それほど二等車の値段と変わらない値段で乗ることができるのである(まあ、この割引制度はくるくる変わるので注意が必要だが)。

で、今回の一等車だが、座席が、コレっ!

IC一等車

コ、コパートメントっ!

IC一等車

前方へとリクライニングすることができる椅子なので、すいている場合は、向かい合っている椅子を二つともリクライニングさせて、ほとんど寝そべることもできるのだ!通路と座席の間は、透明のドアを閉めることもできるし、カーテンも閉められる!自分たち以外の乗客が、このコパートメントに入ってこなければ、かなり快適に使えそうだね!

貸し切りだと嬉しいなと思っていたら、我々のコパートメントには、ひとりイタリア人のおじさんが入ってきた。

おじさんは、さすがに日本人女性3人に囲まれてちょっとモジモジしていた。いたたまれなくなったのか、電話をかけて、イタリア語で、「聞いてくれよ~。僕は今ICに乗ってるんだけどさー、日本人女性に囲まれてるんだよー」などと話し始めた。私が、つい、そっちの方を見てしまうと、おじさんは「ヤバイ!日本人に話の内容がバレてる!」と思ったのか、声のトーンを低くしてしゃべっていた。

このおじさんは、ナポリで降りて行った。特に話などしなかったけど、お互いに手を振って別れた。ここナポリからは、誰も我々のコパートメントに乗って来なかったので、3人で貸し切りとなった。わーい!

さて、このナポリでICは異常に長く停車した。私とナポリは不倶戴天なので(話せば長くなる。だが大した話ではない)、私は一秒でも早くナポリを脱出したかったのだが、それはそれは長く停車した。仕方がないので、この停車時間を利用して、お昼ご飯を食べることにした。

わざわざ姉がちょっと駅から遠出して買ってきてくれたパニーノは…

ビックリするほどまずかった。

……………。

いや、食べ物には感謝しなければなりませんよ。日本人は「いただきます」という精神を持ってますね。スバラシイ精神ですね。わかってますよ、まずは食べるという行為そのものが、感謝が必要な行為ですよ。その精神をリスペクトしたうえで、それでもあえて言いますよ。

ビックリするほどまずかった。

これって特筆すべきことなんですよ!イタリアでは、たとえ姉と私のようなビンボー旅行をしていても、「そこまでおいしくないもの」に出会うことはあっても、「明らかにまずいもの」に遭遇したことは、今までタダの一度もなかったんですよ!タダの一度もですよ!

ある意味これはショックだった。このブログでも繰り返し「イタリアでは食べられないほどまずい食べ物が出てくることはない」と書いてきた。確かに今年、ローマのバチカン美術館で、まずい紅茶を飲んだ。だが、バチカンは正確にはイタリアではないし、何せバチカン美術館という場所が特殊であるし、まあ紅茶だから、イタリア人が調理したものではない。しかし今回は、普通の街角のバールで、このパニーノは売られていたのだ。

ああ…「イタリアでは食べられないほどまずい食べ物が出てくることはない」という、黄金律にも似たルールが、ついに破られる時が来たのだ…。

それでも、「食べ物への感謝」と自分に言い聞かせながら、パニーノはかろうじて食べ切った。かなり無口になっている母と私に対し、姉がおずおずと(うちの姉がおずおずとしゃべることは本当に珍しい)、「一応デザートも買ってきたんだけど…」と、甘い菓子パンを取り出した。

食べてみた。

………これは、本当に、食べられないくらいまずかった。はっきり言って、「えっ?これ食べられるものなんだよね?」というレヴェルであった。食べたらお腹を壊すんじゃないか、と私の本能が警告を発しているレヴェルだったので、さすがにこの菓子パンは食べずに捨てることにした。旅行中に変なものをガマンして食べて、お腹を壊すなんて愚の骨頂である。

それにしても、一等車両のコパートメント席は快適~!ドアをカーテンを閉めて、皆、ゴロゴロ、ぐだぐだと過ごした。トイレに行くときに、他のコパートメントの人達が見えたが、どこでも皆、かなりリラックスして過ごしていた。お菓子とトランプを広げて、プチ宴会の様相を呈しているコパートメントもあった。一つのコパートメントは、車掌さんとか鉄道スタッフが牛耳っていて、かなり楽しそうに盛り上がっていた。これでも仕事中なんだろうなあ。仕事が楽しいってことはいいことだよ。

ナポリから母娘3人の貸し切り状態だったコパートメントだが、ついにローマで、我々のコパートメント内にある指定席の切符を持った女の子が乗ってきた。貸し切り終了ー。ローマでも、かなり長い時間停車した。イタリアの鉄道は、どうして大きな駅では長時間停車するのだろうか。どうしてだろうねえ。

目的地のキウージは、ローマから1時間半ほどなのだが、結構すぐに着いた。キウージで降りる人は予想以上に多く、同じコパートメント内にいた女の子もここで一緒に降りた。キウージは、交通の要所のような町で、鉄道が通っていない南トスカーナ地方の町に行く時は、玄関口となる町である。

このキウージ駅には、イタリアの駅で滅多にお目にかかれないものに遭遇した。それは、エレベーター!2~3人乗りだったので、他のイタリア人もいたため母だけ乗せて、私と姉は階段を歩いたが、ちゃんとエレベーター動いたよ!ちょっと感動した。

キウージからピエンツァに行くには。もしバスを使うなら、キウージからモンテプルチャーノまで行き、そこでピエンツァ行きのバスに乗り換えなければならない。キウージからモンテプルチャーノまでいくバスは本数が多いそうなのだが、モンテプルチャーノからピエンツァへ行くバスは、何と、午後2時台の次は午後5時台しかいない。しかも5時台のバスは最終バス。5時で最終って…文字通り終わってるよ…。

ちなみに、既に現在午後2時半くらいで、キウージからモンテプルチャーノまでもバスで30分はかかるらしいので、明らかに2時台のバスには間に合わない。5時までバスを待つとかアウトオブ選択肢。というわけで、キウージからピエンツァまで、ダイレクトにタクシーで行くことにした。人数が3人もいれば、タクシーにのる勇気も出てくるってわけさ(料金的な話)。

イタリアの地方の駅には、タクシーなど待機していないことも、ままあるのだが、ここキウージには、2台のタクシーがスタンバッていた。よしっ!勝利っ!長距離になるので、最初におおよその料金を確認しておこう。運転手さんに、ピエンツァまで行きたいのですが、だいたいいくらくらいになりますか?」と聞いてみると、「うーん、メーター「が決めるからわからないけど、60~70ユーロくらいかなあ」とのことで、想定していた金額と近かったため、乗り込んだ。

メガネをかけたこの運転手さんはなかなかフレンドリーな方で、運転しながら、ピエンツァまでの道中に通った町の説明をしてくれた。まずは、キアンチャーノ・テルメ。温泉でとても有名な町だが、ここの温泉水は体に良く、飲む温泉水として有名らしい。
車が丘陵地帯にさしかかると、この辺りは「キアーナ渓谷」だと教えてくれた。

キアーナ渓谷

この日に撮影した写真ではないが、キアーナ渓谷付近の写真。

「キアーナ渓谷は、キアーナ牛といわれる牛が美味しくて有名なんだよ」と運転手さん。あー、何だか聞いたことあるような!そして、遠方に見える町を指さして、「あれがモンテプルチャーノの町だよ」。モンテプルチャーノ!ピエンツァから日帰りで行く予定なのだが、ちらっと町の下に見えている教会が美しい。「モンテプルチャーノは赤ワインが美味しい。それから、ここ一帯は、ジャムとはちみつも美味しいんだ!」。へー!ジャムとはちみつ!そうなんだー。

「それから、やっぱりペコリーノ・チーズだよね。ペコリーノっていうのは、ペーコラから来てるんだけど…ペーコラってわかる?」。私が首を振ると、「ええと、英語では何ていうんだったっけ………シープっ!」。羊さんね!「そうそう、ペコリーノ・チーズってのは羊の乳からできたチーズなんだ」。そこにタイミングよく、車窓に放牧された羊さんたちが現れたので、「あ、ペーコラ、ペーコラ!」と喜ぶ運転手さんと私。何て平和。

モンテプルチャーノを過ぎると、ピエンツァはすぐである。運転手さんに、最初にホテルの住所を教えておいたのだが、彼は「たぶん、一度行ったことがあると思う」と言っていた。だが、ピエンツァが近づくにつれて、自信が無くなって来たらしく、携帯電話で友達に電話をかけて、場所を確認していた。そして、彼は、よしわかった!と言う風に、意気揚々と目指す場所へと車を走らせた。
そして、あるホテルの前で停車した。「さあっ!着いたよ!ここだよ!」。

…うーん、このホテルじゃない。何でわかると言うと、このホテルも宿泊先の候補のひとつだったが、熟慮したあげく他のアグリツーリズモを予約したので、外観の写真を覚えているのだ。ホテル名も似ているけど、少し違うし。

そこで運転手さんに「ごめんなさい、ここじゃないと思います。おそらく、さっきコープ(スーパーマーケット)の前を通り過ぎましたけど、あの近くだと思うんです」と言ってみると、彼は「えーっ?本当に?確信がある?」との反応。プロのドライバーより、日本人旅行者の方が正しいなんてありえないですもんね。

そこで、彼はいったん車を降りて、我々がコピーして来ているアグリツーリズモの名前と住所の紙を持って、目の前にあるホテルのカウンターへと聞きに行った。で、戻ってきた。少ししょげていた。「あなたの方が正しいです。やっぱりコープの近くだって言われたよ」。

で、コープの近くへ戻ると、我々が宿泊するアグリツーリズモの看板を発見した!よしっ…と思ったのだが、看板が微妙な位置にあるので、どの建物が我々の予約しているアグリなのかわからない。運転手さんは、「ちょっと待ってて!」と行って、車を降り、あっちこっちの家をドンドン叩きはじめた!うをー!親切ー!一つの家から子供が出てきて、隣の家を指さした。

指さされた家は、2階の方に、堅く閉ざされた木の扉があった。運転手さんはドアを壊しそうな勢いで、ドンドンドンと叩いた。反応ナシ。そこで、もっと激しくドドドドンと叩くと、中からおばあちゃんが出てきて、ニッコリと笑った。どうやら、ここで合っているらしい。

いろいろガイドしてくれたり、最後にドアをドンドンしてくれたりしたので、運転手さんに、メーターよりも多めに代金を払うと、「ええーっ!ボク道に迷ったりしたのに…ありがとう!」と喜んでいた。でもね、この運転手さんがいなきゃ、我々は、あんなにドアを壊しそうな勢いでノックする勇気はないので、ここのアグリツーリズモを探し当てられなかったかもしれないんだよ!本当に助かったよ、ありがとう!

2階から降りてきたおばあちゃんは、農家のおばあちゃんのイデアって感じの、笑顔のかわいい素朴なおばあちゃんだった。我々は1階部分を借りて宿泊するようだ。その我々の部屋のドアには、カギがぶらさがっていた。…て、おばあちゃん、ドアにカギがぶら下げてあるってことは、外から侵入されますがな…。でも、きっと大丈夫なんだろうね。近所中皆顔見知りで、何の不安もないんだろうね。

このカギの掛け方が、かなり難しかった。イタリアのカギは結構難しいことが多いのだが、ここのカギは、この地方特有のものなのか、文章で書くのはちょっと難しい、ドアノブを使いこなさないと開閉できない、一風変わったカギの開け閉めだった。

それにしても、今回宿泊する部屋は、何ともカントリー風でかわいらしい!

ピエンツァ

部屋には暖炉が付いている!おばあちゃんは、寒かったら使っていいよと言っていたが、使い方わからないし!母は、「お母さんは、小さいころ家にあったからわかるよ。使ってみたいよ!」と言っていたが、幸いそれほど部屋は寒くなかったので、使わずに済んだ。でも、今に思えば、雰囲気を楽しむために、使ってみてもよかったなー。

ピエンツァ

キッチンの写真。

ピエンツァ

おばあちゃんが、たまごを持ってきてくれた。今朝、採れたものたらしい。テーブルの上にあるのは、お手製のオリーブオイルとワイン!それから、自家製と思われるジャムとはちみつももらった。何だかアグリツーリズモって感じになって来たね!タクシーの運ちゃんが、このへんのジャムとハチミツは美味しいと言ってたから楽しみだね!盛り上がってきましたよ!昼に電車の中で食べた、マズすぎるパンのことなんかもう忘れたよ!

(※アグリツーリズモとは、農家の一部を間借りして宿泊する旅スタイルのこと。農業体験や見学ができたり、採れ立ての野菜などをもらえる場合もある)

おばあちゃんは、「夜にラウラが帰ってくるからね。それまでは何かあったら、私が上にいるから聞きに来てね」と、ほころびそうな笑顔で手を降って、2階へ戻って行った。おそらく、英語がしゃべれる娘さん(ラウラ)が帰ってきて、手続きとかするんだろうな。

ピエンツァ

素敵で非の打ちどころのない部屋だったのだが、テレビが映らなかった。これがイタリア・クオリティである。あとでラウラに直してもらおう(期待はしてない)。

庭の方に出てきたら、黒くて大きな犬が走ってきた。とても人懐こくて、我々の匂いを嗅いでいた。この子はとても賢くて、宿泊客の匂いもちゃんと覚えるようで、知らない人が敷地内に来たら吠えるが、匂いを嗅いだ後は、我々に対して一度も吠えなかった。もともと猫派だらけの我々一家だが、この子とはたった4日間ではあったが、かなり分かり合えた。名前はルナで、女の子だそうだ。イタリア語では「月」という意味になる。シャレた名前だね!

ピエンツァ

庭を、こうやって、猫ちゃんも走り回っていた。あー、空気は美味しいし、敷地は広いし、こんなところで生活できれば、猫ちゃんは本当に幸せだろうなー。

とりあえず今日は、久しぶりにキッチンのついた部屋に泊まれるので、姉と二人で食材を調達してくることにした。家のすぐ近くにはコープ(スーパー。日本のコープと同じような感じ)もある。だが、ピエンツァの旧市街の方にもちょっと行ってみたかったので(宿泊するのは旧市街のすぐ近くだが外側)、旧市街の方まで行ってみた。

夕方になってから風が強くなり、雨もちょっと降り始めた。カンパーニア州より、明らかに気温が低いので、ちょっと肌寒く感じる。途中に郵便局があったので、お金を引こうと思って行ってみると、国際キャッシュカードが使えないATMだった。およー。郵便局のATMでカードが使えないのは初めてだった。

旧市街の入口にも銀行があったが、こちらのATMでも国際キャッシュカードが使えなかった。後で、ラウラ(おばあちゃんの娘さん)が部屋に来ると言っていたので、その娘さんに他のATMの場所を聞けばいいだろう。

旧市街の八百屋さん、肉屋さん、パン屋さんに入って、いろいろと食材を購入した。どこのお店も親切だったが、特に八百屋のおにいさんはとても丁寧で、ひとつひとつの野菜を、何の料理に使うのかをたずね、一番適したものを選んでくれた。八百屋魂である。

ピエンツァ

ちょっと雨が降っていて暗いが、夕刻のピエンツァの旧市街。

ピエンツァ

この日の夕食は、久しぶりの自炊で生き返ったー!お手製オリーブオイルも、予想通りに美味しかった。ていうか、本当に美味しかった。ていうか、母と姉が料理上手なので、素材の美味しさをしっかり料理に生かしてくれるわけだね!私?食べる係だね。食べる人がいるから作る喜びがあるんだよ(そんな開き直り方あるか!)。

美味しい夕食に満足しきったところで、ラウラがやってきた。「ブオナセーラ!(こんばんは)」。予想通りおばあちゃんの娘さんだったが、ラウラの英語と私の英語は同じくらい危ういレヴェルだったので、どうせなら片方がペラペラな言語の方がよかろう、てなわけで、イタリア語でいろいろ手続きした。

ラウラにATMの場所を聞いてみると、「ここピエンツァには2つのATMがあります」とのことだった。…とどのつまり、さっき私がチェックした2つのATMが、ピエンツァにおけるATMの全てってわけですな…?「どちらも、私のカードは使えなかったんですー」と言ってみると、「モンテプルチャーノに行く予定がありますか?モンテプルチャーノならたくさんありますよ」とのお答えだった。

モンテプルチャーノはもともと訪問予定なのだが、彼女は車でモンテプルチャーノに通勤しているそうで、「明日早いけど、朝8時前でよければ、仕事に行くついでにモンテプルチャーノに乗せていきますよ」と、ありがたいお言葉が!ピエンツァからモンテプルチャーノまではバスがいるのだが、本数が少ないのでちょっと不便なのだ。このお言葉に甘えて、明日は早起きしてモンテプルチャーノに行くことになった。

それにしても、トスカーナの田舎町はやっぱり最高だ。空気は美味しいし、のどかだし、食べ物は何でも美味しいし!まだ最高に美しい風景と言われるオルチャ渓谷は見ていないけど、明日、ゆっくりと堪能しようではないか!

しかし、心配なのは、相変わらずぐずついた天気である。今年は本当に雨が多い。私の日ごろの行いは、良いとは言い難いけど、悪いことは何もしてないのになあー(この日ごろの行いのレヴェルで、私が望んでいるのは快晴なので、高望みなのである)。ああどうか明日は、お天気の中、オルチャ渓谷を拝めますように!

あっ、これは余談だが、やっぱりラウラが来てもテレビは直らなかった。こんな素敵な田舎町では、文明の機器になど頼るな、ということですね?(ラウラはスマホ使ってたけどね)