3/6パトラからアンコーナへ デッカイ朝日と共に起きぬ
2段ベッドの上で、私はふっと目が覚めた。相変わらず、心地よい揺れが、下から伝わってくる。…ああ、そうだ、今、アドリア海の上だ。それほど高級な感じがするベッドではないけど、なかなか寝心地は良かったなあ…などと思いながら、ふっとカーテンを開けてみると、窓の外には、かすかに明るくなり始めている海が見えた。
…もしかしたら、今デッキに出れば、朝日が昇るのが見えるんじゃない?
私がもぞもぞと動いていると、母も姉も何となく目は覚めていたようで、私が「ねえ、デッキに朝日を観に行かない?」と言うと、母も姉も大賛成であった。朝日が昇ってしまう前にデッキに出てしまいたかったので、顔は水でちゃっと洗って、メイクもせずに3人でデッキまで出た。早朝だし、誰に会うこともなかろう。
デッキに出てみると、ギリシャの方面には、非常に不可思議な形をした雲があった。昨日、不安定な天気だったから、こんな変な雲が出ているのかなあ。ジブリファンでない私でも、こう思ってしまったよ。「あの中にラピュタがありそう…」。
早朝のデッキは寒いのではないかと思ったが、さすが南欧、全くもって寒くなかった。こんなに寒さもないのだから、乗客さんたちは、朝日を見に来るんじゃないかと思ったが、我々以外は、船のスタッフさんが、休憩がてらという感じにデッキに出ているだけで、だーれも朝日に関心を示していなかった。
だいぶ空がピンクになってきたのだが、この雲の多さでは、朝日を見るのは難しいかなあー。そもそも、もうこんなに明るいと言うことは、どこか雲の影に、既に朝日は昇ってしまっているのではないか。
…などと考えながら、四方を見渡してると、水平線に、妙にオレンジ色に光っている、短い棒状のものを見つけた。何だろーなーアレ。などと考えていると、何だかそれが少しずつ大きくなってきているような…。
矢印で指している部分。…もっ、もしや…あそこから日が昇ってくるのか…?
ど、どうやら、ビンゴのようだ…。もうこんなに空が明るくなっているので、とっくに陽は上っていたと思ってたのだが、これからだったんだー!しかも、ほとんどが雲に覆われている中、ちょうど朝日が昇ってくるところだけ、ぽっかりとそこだけホウキか何かで掃いたかのように、一直線に雲が無く、空が見えている。こんなラッキーってありなのか!?
水平線から、「おはよー!」って感じに、徐々に顔を出しつつある朝日っ!ていうか、朝日ってデッカイっ!古代の人々が、太陽信仰を持つのって、わかるなー。デカくて明るくて光をもたらすもの…これが、人間の持つ、神様の根源的なイメージなんだろうなあ。
朝日に照らされる船体。この写真だけで、朝日か夕日かを見分けるのって、困難ですな。
赤く照らされた船体に、我々3人の影が映っている。自然の作り出すスペクタクルってスゴイ。
そして、朝日は完全に昇った。何だか、すんごくメデタイ感じだ。
すぐ上に、一直線の雲があったので、しばらくすると、朝日は隠れてしまったが、水平線から昇る朝日のショーは、期待以上にスゴかった。何といっても朝日のデカさにビックリした。
さて、部屋に戻って、ゆっくり顔などを洗って、セルフサービスレストランに、朝ご飯を食べに行くことにした。
クロワッサン、オムレツ、ベーコン、バナナ、ヨーグルト、牛乳(温めてくれた)、コーヒーなどをトレーに乗せて、3人で27ユーロ。あくまで朝ごはんなので、比べられるものではないかもしれないが、昨日入った、オーダー式レストランの方が美味しかったし、そんなに値段も変わらない感じだなー。というわけで、昼ごはんは、オーダー式レストランの方に行くことにした。(食べることばっかり考えている我々。)
朝ごはんを食べた後は、いろいろと船の中を冒険~!(コドモかお前は)
ここはデッキクラス。屋根はあるが、上の方は吹き抜けている。プールとバーがあるが、この季節はプールは開いていない。バーは開いているが、何せブールがやっていないわけだから、お客さん来るわけない。店の人ヒマそう。シャワーがあるのだが、もしかしたらプールが開いていない時は、シャワー室も閉まっているかもしれない。
本来は、デッキクラスの乗船券を購入している人は、ここで夜を明かさなければならないらしい。椅子もテーブルもあるけど、何せ吹き抜けているので、真夏でなければ、寝袋などを持っていない人は、寒いんじゃないかと思う。実際は、デッキクラスの人達は、船内に入って、階段の下などに持参の毛布などを敷いて、上手に眠っていた。
船内は、7階に、カフェやレストラン、カジノバーにゲームセンターみたいなものまで揃っている。
海を見ながらゆったりできるオシャレなカフェ。
子供たちが遊べるスペース。
飲み物などをオーダーしなくても、ゆっくり座っていられるラウンジもたくさんある。オフシーズンの3月は、結構こういうソファは空いていて、ゆっくり使うことができた。夏場はもっと混雑するのかなあ。
海を見ながら、ゆっくり座っていられるサンデッキもある。ここは気持ち良かったー!船が上げる波しぶきが涼しげで、実にさわやかだ。
トイレもオシャレで清潔なのよー!オフシーズンなので、使う人もほとんどいないうえに、1時間に一度は、スタッフが清掃に入っているというサインもあった。トイレが快適なのって大事。カナリ大事である(だが、残念ながら、トイレットペーパーは流すことはできないギリシャ仕様)。
22時間の航行と言えば長く感じるが、結構ぐうたらと寝たこともあって、意外とさっさと時間は過ぎていく。自由に船の中を遊びまわれるおかげか、日本からヨーロッパまでの12時間のフライトよりも、短い時間に感じられる。
というわけで、朝ごはんを食べたばかりのような気がするんだが、あっと言う間にお昼時になった。ランチタイムは、12時~14時である。
朝ごはんを食べたセルフサービスレストランより、昨夜、夜ごはんを食べたレストランの方が美味しく、また値段もそれほど変わらない感じがしたので、そちらに入った。
こちらのレストラン。ア・ラ・カルト・レストラン「ballet」というお名前。
朝ごはんを、遅めにゆっくり食べため、それほどお腹が空いていなかった我々は、今回はコース料理は止めて、いくつか単品の料理をオーダーして、3人でシェアした。パンのバスケットがお通しで出てくるので、主食は頼まずに、副菜だけオーダーした。
こちらは地中海風魚のスープ。地中海クルーズ中に食べるには、実に正しい料理ではあるまいか。。大きなパンが入っているのが、(地中海スープの?)特徴らしい。スープも美味しかったけど、このパンがすっごく美味しかった!
こちらはサーモンのグリル。船の上だからね!魚料理を食べなきゃね!しかし、このサーモンも、非常に美味しかった。船の上で、こんなに美味しく食事ができるとは、思ってもいなかったよ!
サービスで出てきたパン、お水、サラダ、スープに、サーモングリルで、会計は32.30ユーロ(3人で食べてこの値段だよ!)。軽めのランチではあったけど、味は美味しいし、値段はそれほど高くないし、この船の上のレストランは超おすすめっ!この船自体が、ギリシャとイタリアをつないではいるが、ギリシャの会社の船だそうで、このレストランは、ギリシャの伝統料理が食べられるレストランという感じだ。
ちなみに、昨日も我々のテーブルサービスをしてくれたウェイターさんは、今日もいて、というか、今日もお客さんは我々くらいしかいなかったので、マンツーマンでサービス…というより、ヒマでヒマでしょうがないらしく、この日はもう一人いたウェイターさんと、我々のお世話を奪い合っていた。奪い合われる私って貴重。昨日話していた、ワイフが日本人だというカジノバーのスタッフを、廊下でつかまえて、恥ずかしがって嫌がっているそのスタッフさんを、引きずって連れてきた…。ご、ごめん、スタッフさん…・。我々が日本人なばっかりに…!
というか、そのスタッフさんは、日本人の奥さんがいるのに、日本語が話せないのが恥ずかしかったらしくて、近くに来ると、フレンドリーにお話してくれた。奥さんは、奈良出身なのだそうだが、まだ彼は日本に行ったことがないらしい。奈良って、私は日本で一番好きな観光地だ(仏像とか古墳が好きな平城ガールな私)。「奈良は素敵な場所なので、ぜひ行ってみてください」とおすすめしておいた。
美味しい昼食を食べた後は、部屋でゆっくり過ごしたり、サンデッキでぼんやり海を眺めたりした。
部屋の窓から海をボーっと見ていると、船が見えたので、パチリ。窓の外が海ってのも、なかなか楽しい体験だ。イタリアに近づくにつれ、天気が良くなってきたなあ。
カフェに入って、ギリシャでは飲み損ねた、ギリシャ風の「フラッペ」を飲んでみた。デザートコーヒーみたいなもので、なかなか美味しいけど甘い。でも、一度飲んでみたかったので、船の中で飲めてよかったー♪
それにしても、何時にアンコーナに着くのかなあ。予定では16時なんだけど、この16時って、ギリシャ時間なのかな?それともイタリア時間?ギリシャとイタリアでは、1時間の時差があるのだ。
そこで、フロントに行って聞いてみると、この船全体を、ちゃきちゃきと牛耳っている感じの女性スタッフが、顔も上げずに厳然たる声で、「ギリシャ時間で16時!」と答えた。えっ!ギリシャ時間だったら、あと1時間でつくじゃん?我々は、部屋に戻り、身支度をし、15時45分(ギリシャ時間で)くらいには、ロビーみたいなところで待機した。
実は、アンコーナに着いた後は、アンコーナから海沿いにペーザロ、ペーザロから山奥のウルビーノ、という移動をする。ペーザロ発ウルビーノ行きのバスは、最終バスが20時15分発。定刻通り、16時くらいにアンコーナに着けば、楽勝でウルビーノまで到着できるのだけど、実は、このギリシャからイタリアへ行く船は、余裕で数時間…数分じゃないですよ、数時間!…遅れるという実体験情報を、いくつか得ていた。最低でも、アンコーナ港に18時半くらいに着かないと、ウルビーノ行きの最終バスを逃してしまうかもしれない。
だが、ギリシャ時間16時に到着ってことは、時差で1時間遅れているイタリアには15時くらいの到着になるし、思いの外、余裕じゃないの!今回の旅行は、いくつか不安な移動経路があり、この、船→アンコーナ→ペーザロ→ウルビーノっていうルートは、その一つだったのだが、なーんだ、余裕で突破できそうだねっ!
…と、考えた私は、甘かった。甘すぎた。船は、イタリア時間15時を過ぎても、全く陸地らしきものは見えてこない…。フロントの近くのロビーに座って待っていたので、「ギリシャ時間16時に到着!」と、厳然と言い放った女性スタッフをちらちら見てみるが、目も合わないし、気にもしてない。つ、つおい…。
何か威圧感だけで、私は余裕で負けていた。負けてるんだから、しょうがない。おとなしくイタリアに着くまで待つしかないのだ。ちなみに、個室を借りた場合は、このフロントに、最後に紙製のカードキーを返さなければならないようなので、お忘れなく。
結構、長い時間、このロビーで過ごしたね。ウン、見事にだまされたね。まだまだ個室でくつろいどけばよかったね。…というか、到着の30分くらい前には、館内放送が英語で流れるので、それを聞いてから支度すればよかったんだね。今後の教訓だね。またこの船乗りたいからさあ!(ごはんが美味しかったから)
ロビーで待機してから2時間ほどで、ようやく、ようやくイタリアの陸地が見えてきた。2時間って待ちすぎである。そうさ、私は待つ女(このフレーズは何の歌から拝借したものでもなく、私のオリジナル)。
やっとアンコーナが見えてきたー!
で、ここからも、想像を絶するほど長かった。アンコーナの港に、しっかり接岸し、船が完全に止まった後は、下の方からドンドン車が出ていく音がする。んが、人間は、なかなか船から出してもらえないのである。おそらく、車がガンガン走っているから、危ないから出さないのだろうけど、船から人間が降りる時って、何か、橋みたいなものを渡して、建物の中に降りるものじゃないの?(それって、小さめのフェリーだけ?)そういうスタイルにすれば、危なくも何ともないと思うんだけど!
そんなに急いでいるわけじゃないけど、一刻も早く、ウルビーノまで行ってしまいたいので(遅い時間に到着するのはイヤだからな)、何となく気が急いて、閉ざされた扉を見つめ続ける私。何人か、本当に急いでいる人たちも見て、皆でこの扉を睨み付けていた。扉「あ、あっしには罪はありませんから!」
定刻から遅れること2時間半!ようやく、乗船する時に最初に会った、無愛想なスタッフが、この扉を開け、無事にマグナ・グラエキアは終了~。
しかし、アンコーナでうだうだしているわけにはいかない。我々3人には、この後、この日中にウルビーノまでたどりつくというミッションが待っているよー!