3/12カスティリオーネ・デル・ラーゴ旅行記2 星空のライオン

さて。湖の町、カスティリオーネ・デル・ラーゴ!

この町の見どころは、やっぱり何といってもトラジメーノ湖である。じゃ、どこから湖が見えるのかと言うと、シラナイ。…BBI(カスティリオーネ・デル・ラーゴが属している「イタリア美しい村同盟」。美しくなきゃ入会できない厳しい団体)の、カスティリオーネ・デル・ラーゴ紹介のページにも、湖のビュースポットはどこにも書いてない。

グーグルマップを見てみると、おそらくだけど、ロッカ・デル・レオーネ…「獅子の城塞」と呼ばれる城塞に上れば、湖が見れるのだと思われる。

BBIのページを読み解くと、その「獅子の城塞」は、現在市庁舎として使われている、「Palazzo della Corgna(コルニャ宮?)」という宮殿とつながっているらしい。この「Palazzo della Corgna」には、後期マニエリスム期のフレスコ画も残っているらしく、カスティリオーネ・デル・ラーゴの目玉観光地であるようだ(全部BBIの受け売り)。とにもかくにも、城塞まで行けるかどうかわからないが、この「Palazzo della Corgna」に入ってみようっ!

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

これが「Palazzo della Corgna」。「パラッツォ(Palazzo)」って、イタリア語で、宮殿とかお屋敷って意味なのだが、この外観は、パラッツォって感じしないなー。

中に入ると、「パラッツォからは湖の眺めがいいよ!」みたいなポスターが貼ってあり、宮殿内から城塞まで行けるようだ。宮殿と城塞の見学で、合計5ユーロ。中は貸し切りだと思っていたのだが、我々以外にも数人の観光客がいた。へー。やるねえ、カスティリオーネ・デル・ラーゴ!

宮殿内は写真撮影禁止で、オレンジ色の強いフレスコ画や、昔の衣服とかが展示してあった。フレスコ画は、16~17世紀頃の作品で、当時のウンブリア・トスカーナ地方では最大の工房による作品らしい。正直言って、何が何でも人生で見なきゃならねえフレスコ画って感じでもなかったが、おそらくトラジメーノ湖だと思われる、湖が描き込まれているのがちょっと面白い。

あとは、昔の衣服を着ているマネキン(男性)がねー、無意味にウィンクしていた。ウィンクしているマネキンって初めて見たなあ。でも、イタリア人男性を忠実に模したマネキンだと思った。

しかしマネキン君には悪いがね、我々のメインは湖なのだよ。この宮殿から、外に出られる場所があり、そこから、城塞への道が続いていた。

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

このトンネルをくぐって行くのよー!イタリアの城塞って、こういう、人が一人通るのが精一杯みたいなトンネルがよくある。しかし天気は良いし、いい雰囲気だなー。

ここで、城塞の方から帰ってきたアメリカ人の観光客ご夫婦と会い、女性の方が、「あなた達の写真をここで撮ってあげるわよ!」と自分から言い出した。そして、わざわざ立候補しただけあり、かなりの写真の腕前であった。私も、いつか、カメラ撮影を立候補できるような腕前になりたいよ。ダガ、「なりたい」と思っているだけで、なるための努力はなーんにもしていないので、はじめの一歩すら踏み出していないのだ。

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

トンネル内は、こんな感じで、天気がかなり良いこともあって、外からの光が入ってくるため、全然暗くなかった。
トンネルをくぐり抜けると…

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

こんにちは、トラジメーノ湖っ!いやー、天気が良いねえ!絶好の湖日和である!

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

「獅子の城塞」は五角形の形をしていて、壁の上を歩くことができる。この五角形の形が、星座の獅子座の形に似ているので、「ロッカ・デル・レオーネ」…日本語にすると「獅子の城塞」と呼ばれている。中世に作られた城塞だそうだが、中世には、この城塞にちなんで、カスティリオーネ・デル・ラーゴの町自体が、「カスティリオーネ・デル・レオーネ」という名前で呼ばれていたらしい(全部BBIの受け売り)。

しかも、この城塞、ヨーロッパ史ファンに人気の、神聖ローマ皇帝フェデリコ2世が作ったものなのだそうだ。つまり、皇帝派と教皇派が争っていたという時代の産物ということかな?うーん。ヨーロッパ史は、マジで一度真剣に取り組んでみないと、いろんなことがしっくりわからないね!

しかし、ヨーロッパ史って複雑で、ヨーロッパに影響を与えている周辺諸国も絡んでくるし、ぶっちゃけ、世界史を本気で学ばなきゃならないのだ。とりあえず最近、有名な世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)って本を読んでみたよ。はじめの一歩ってやつだよ。

それにしても、中高生だった頃って、あんなに本気で世界史に取り組む時間が与えられていたと言うのに、いったい私はその時間に何をやっていたのであろうか(たぶん居眠りしてた)。私は本気で、勉強って、世界についてわけもわかってない若い世代の特権じゃなくて、もう少し大人になってから取り組む時間を与えられるべきって思う。むしろ、体力が有り余っている高校時代とかって、労働した方が世界にとっても生産的なんじゃないか。こんなこと考えるの私だけかなあ。

自分が高校時代に、世界史をちゃんと勉強しなかったことの言い訳終わり。あー、トラジメーノ湖は天気も良いし、気持ちいいっ!

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

静かでのどかな水面。ウルビーノのおしゃべりタクシー運転手は、そういえばトラジメーノ湖は水温が低いから泳げないとか言ってたなあ。水温が低かろうが高かろうが私は泳げないけれども!湖の色は、エメラルドグリーン色の場所と、水色の場所があった。何で色が違うのかはわからなかった。もしこの場に、あのウルビーノの運転手がいたら、たとえその解答が正しかろうが正しくなかろうが、色が違う理由を、嬉々として説明したに違いない。

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

湖には船も浮かんでいて、雰囲気たっぷり!湖の魚でも獲ってるのかなー。そういえば、カスティリオーネ・デル・ラーゴの郷土料理ってのは、湖で撮れるコイのスープ煮込みみたいな料理だそうだ(これももちろんBBIの受け売り)。

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

湖の反対側には、サンタ・マリア・マッダレーナ教会のクーポラが見える。こちらの眺めもなかなか素敵である。
そんな感じで、気持ちの良い「獅子の城塞」…と言いたい所だが、一つだけ難点があった。それは、異常に「頭虫」が多かったことである!

みなさんは「頭虫」をご存知だろうか?晩夏頃の夕方に、頭の上に集まってくる白っぽい虫の集団で、手で払っても払ってもついてくる、都市伝説みたいな虫だが、実際に存在するのである。九州の田舎で育った幼少期、夏休みの終わり頃に、いつもついて来るこいつらに、実に悩まされていたものである。

それが、東京に来て、しばらく頭虫とは無縁の生活を送る中、私は頭虫がこの世に存在することを、すっかり忘れてしまっていた。おお、頭虫。お前は、洋の東西を問わず、人の頭の上に、今でも生息していたのだな…!もーこの「獅子の城塞」では、この頭虫が、ずーっと顔の周りを飛び回っていて、手で払いながら歩くのが、実に大変だった。「獅子の城塞」ならぬ、「頭虫の城塞」だよっ!

頭虫に悩まされながらぐるっと一周が終わりかけた所に、「Torre」という表示があった。「Torre」は、イタリア語で「塔」である。えー。どこかからか、もっと上にのぼれるのかなー。ふっと、開けてはいけなそうな、明らかに観光客向けではない感じのドアを見つけた。どうせ、鍵がかかっているのだろうと、ダメ元で開けてみると、開いた!

中をそーっとのぞいてみると、学校の屋上に向かう階段のような、上に続いている階段がある。まさか、ここから「Torre(塔)」に上れるのか?中は電気も点いていたし、立ち入り禁止とも書いてなかったので、上ってみた。

すると、やっぱり、ここは塔への上り口だったらしい!城塞の一番高い所まで上れたよ!

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

高い所から見ると、城塞が五角形なのが、もう少しよくわかるよー!五角形ばんざい!獅子座ばんざい!獅子の城塞ばんざい!(さっきまで頭虫の城塞とか言ってたくせに…)

というわけで、塔まで上れて、非常に満足して、城塞を後にした。ちなみに、この塔は、時計回りに城塞を回った時に、ゴールらへんにある、重たそうなドアをあけて上る。確か、ドアには、手書きか何かで「Torre」とか書いてあったような気がするが、記憶がぼんやりしている。なかなか素通りしてしまいそうな塔である。

さー。湖も見たことだし、後は、湖の魚でも食べるか!

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

レストランへ向かう途中の本屋さんで、ハビエル・サネッティの自伝を見つけた。自伝と言っても、イタリアの自伝ってのは、本人が書くのではなく、本人から聞いた話を他の人がまとめる形式である。だから、作者名はサネッティではない。こういう所は、著者名にどどーんとスポーツ選手の名前を出しちゃう日本とは違う。ちなみに題名は「Giocare da uomo」…「人としてプレーする」…的なタイトルかな?ワカリマセーン!

お昼ご飯を食べるお店に選んだのは、城壁のすぐ外側にある、「Osteria le Scalette」という、トリップアドバイザーで人気の高かったお店。

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

トラジメーノ湖で獲れるお魚を食べられるお店だそうだ。他に、ワイン類も充実しているのだが、我々はノンアルコール家族。ほら、アルコール無しでも酔える、めでたい脳みその持ち主だから!

中に入ると、家族経営のお店って感じで、やさしいお母さんって感じの、細身の女性が、オーダーを取りに来てくれた。メニューには、いっぱい、トラジメーノ湖の魚だと思われる魚の絵が描いてある。ここで母が一言。「淡水魚って、あんまり美味しくないのよねえ」。…湖には、淡水魚しかいませんから!

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

こちらは、BBIのページに、町の特産だよ!と書いてあった「Faglioina」…インゲンマメ入りのサラダ。皮が薄くて消化がよく、湖周りの土壌のおかげで育つ豆だよ!(BBIの受け売り)お味は…豆だった。

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

こちらは、本日のすっごいオススメと書いてあったので、オーダーしてみた、シエナ豚のベーコン入りのバスタ。これがねえ、美味しかったわけですよ!湖の町で、肉料理を堪能している私たちは、正しい旅人かどうかはわからないが、豆より美味しかったっす(肉と比べないでよ!By豆)。

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

こちらは、湖の町のメインっ!湖の魚のスープっ(Zuppa di pesce di Lago)!ウェイトレスさんが、魚の小骨に気を付けて!と、さかんに注意してくれた。確かに小骨はありましたしね、母の言う通り、淡水魚って感じはありましたがね、味付けが美味しいので、なかなかのものだったのですよ!

お値段は、3品と、お水、テーブル代含めて、30ユーロ弱であった。

客は、我々と、あと一組くらいしかいなかったが、ここのレストランの子どもとおぼしき、小学生くらいの男の子が、学校から帰ってきた。もしや、あのソーラーシステムの学校から帰ってきたのかなあ。

お母さんとおぼしき、先ほどの細身のウェイトレスさんが、「学校はどうだった?」と声をかけると、「別にー」のお返事。親と話すのが、億劫になってくる年頃なのだねえ。昼ごはんを、このレストラン内で食べる習慣らしく、「何食べるー?」とお母さんが声をかけると、「魚以外(No pesce)」と答えたのが可笑しかった。湖畔の、魚料理メインのレストランの息子も大変なのだ。

食後、ちょっと電車の時間が迫ってきたので、急いで駅に戻ったが、何のことはない、電車は行く時と同じ、20分遅れであった。…行くときに乗った電車が、そのままUターンしてきたんだろうね。往路時の20分遅れを取り戻せなかったんだね。

カスティリオーネ・デル・ラーゴ

というわけで、トラジメーノ湖畔のカスティリオーネ・デル・ラーゴの遠足であった。鉄道fs線で、簡単に訪問できる場所にあるので、トスカーナやウンブリアに行く方で、丘ばかりでなく湖も見たい!という方には、ぜひおすすめである。